金与正氏、南北国境の緊張受け対南拡声器放送の再開を示唆
北朝鮮労働党総務部長の金与正氏は19日、韓国軍による軍事分界線(南北軍事境界線)侵犯への対応としての警告射撃に反発し、軍事力の増強配備や対南拡声器放送の再開などを検討すると明らかにした。金氏は10月19日、「我々は主権守護を言葉では語らない」と題する談話を朝鮮中央通信を通じて公開した。同氏は「韓国軍部の暴力集団の無謀な意地により、南部国境線一帯に緊迫した局面が作り出されている」と主張した。また、韓国軍が南部国境遮断物工事に動員した人員が軍事分界線を越えて来たとし、自動小銃と重機関銃(銃口が太く威力の大きい機関銃)による警告射撃を行い、北朝鮮軍人の安全を脅かしていると非難した。
こうした主張の背景には、軍事分界線をめぐり南北がそれぞれ異なる基準を掲げているという事実がある。韓国軍と国連軍司令部、北朝鮮軍がそれぞれ異なる軍事分界線を設定しており、北朝鮮軍の南下をめぐる解釈は食い違う。韓国軍は、北朝鮮軍が軍事分界線に接近すれば警告放送を、これを越えて南下すれば警告射撃により退去措置を取っている。問題の「拡声器警告放送」は対北心理戦用の拡声器放送ではない。非武装地帯の監視哨所で軍事衝突を防ぐため、北朝鮮軍の越線の可能性を警告する放送であり、韓国軍は北朝鮮軍が軍事分界線以北100メートル以内に接近した際に警告放送を行い、越線した際に警告射撃を実施している。
それでも金与正労働党総務部長は「我々の軍事指導部は、先制的かつ制圧的な措置として、万一の事態に備えて戦術的打撃手段を全南部国境線付近に増強配備する問題と、大韓民国に向けての拡声器放送を再開する問題を検討しており、必要かつ適切とみなされるこれ以外の措置も考慮している」と述べた。北朝鮮は、李在明政権の発足初期に対北拡声器放送が停止されると、対南騒音放送を停止した経緯がある。軍事分界線越線に対する韓国軍の対応を口実に、これを撤回しようというものである。
専門家は今回の談話の意図を、韓国軍の対応の萎縮と国境要塞化工事の継続に求めている。統一研究院のホン・ミン上席研究委員は「地雷爆発事故以降、韓国軍が北朝鮮軍の越線により敏感に反応し、鉄条網の強化などの動きを見せたため、北朝鮮は『国境線化』工事の遅延や衝突の発生を懸念しているとみられる」とし、「こちらにも対応手段があると警告しようとするものだ」と分析した。慶南大学極東問題研究所のイム・ウルチュル教授は「韓国軍の警戒対応を無力化して『南部国境線の物理的要塞化』を手遅れなく完了させ、朝鮮半島に『永続的な二つの国家の国境線』を既成事実として定着させようとするものだ」と指摘した。
一方、19日午後の時点で、最前線では北朝鮮による対南拡声器放送再開の形跡は確認されていない。
