AI聴診器を導入しても心不全の診断率は変わらず
AI聴診器を一次医療機関(診療所・保健所のように医療機関の入り口で診療を行う施設)に導入しても、心不全(心臓が血液を十分に送り出せない病気)の新規診断率は有意に増加しなかったという研究結果が、国際学術誌ランセット(The Lancet)に発表された。ただし、実際にAI聴診器による検査を受けた患者では、心疾患の診断率がより高かった。
使用された機器は米エコー・ヘルス(Echo Health)の「エコ・デュオ(Eko DUO)」である。15秒間の単誘導心電図と心音を記録した後、人工知能アルゴリズムにより左心室駆出率40%以下の低下(心不全)、心房細動、心臓弁膜症の可能性を分析する。
12カ月間でAI聴診器導入群では心不全の新規診断が1342件発生し、患者1000人あたり年2.58件だった。対照群の2.76件(1984件)と統計的に有意な差はなかった。補正発生率比(IRR)は0.94(95%信頼区間0.86~1.02)だった。心房細動(補正IRR 0.98)と心臓弁膜症(補正IRR 1.00)でも有意な差はなかった。
研究チームは、心不全が最初に診断された場所を地域と病院に分けて分析した。地域での診断の補正IRRは0.90、病院での診断は0.92だった。AI聴診器の導入が診断場所を病院から地域へ移す効果は確認されなかった。
一方、実際に使用した患者の分析では異なる結果が得られた。AI聴診器による検査を1回以上受けた患者8942人を傾向スコアマッチングで比較した結果、心不全の新規診断率は対照群の2.33倍、心房細動は3.45倍、心臓弁膜症は1.92倍高かった。3疾患すべてで統計的に有意だった。研究チームは、診断時期が前倒しになった効果ではなく、実際の診断件数が増加した可能性があると説明した。そのうえで、検査対象の選択が医療スタッフの判断に委ねられていたため、選択バイアスなどの可能性は排除できないと付け加えた。
研究期間中、医療スタッフ972人が計1万2725件の検査を実施したが、導入12カ月時点で96施設のうち38施設(40%)は機器をまったく使用していなかった。月1~9回の使用にとどまった施設も38施設(40%)で、月31回以上使用した施設は6施設(6%)にすぎなかった。研究チームは、AI聴診器が実際に使用された場合、追加の心血管疾患の発見が可能であることを示したと明らかにした。
